この記事のまとめ(3つの教訓)
- 前払いの絶対禁止: システム完成前に「完了金」を支払うと、相手にとって残りの作業が「タダ働き」になり、失踪リスクが跳ね上がる。
- 倒産の前兆フレーズ: 外注から「今月資金繰りがヤバくて…」と言われた時点で、その業者の経営は破綻していると判断すべき。
- 経営者の責任放棄: 身内びいきでトラブルを起こした挙げ句、「自己破産してるから回収できない(笑)」と笑う社長の下にいてはいけない。
Web制作やシステム開発において、外注先との「お金の支払いタイミング」は、プロジェクトの命運を左右する最大の防衛線です。
もし、システムが完成し、クライアントの検収が終わる前に**「完了金」を払ってしまったら**どうなるでしょうか? 結論から言います。不良業者は、お金をもらった瞬間に消えます。
今回は、私がディレクターとして巻き込まれた「社長の友達(50歳の外注)」による、総額150万円のプロジェクト崩壊と、自己破産による持ち逃げの実録を公開します。
終わらない開発と「着手金」の分配
前回の記事でお伝えした通り、私が担当していたECサイトリニューアル案件は、社長の鶴の一声で「社長の友達(独立したてのフリーランス)」に丸投げされることになりました。

プロジェクトの総額は150万円。 入金サイクルとして、まずは半金である75万円を「着手金」としてクライアントにご請求しました。
ここまでは通常の商習慣です。 クライアントからの入金後、その半金の中から外注担当者へ彼の取り分(着手金分)が支払われました。お金をもらった彼は「1ヶ月で終わらせますよ」と豪語していました。
しかし、彼が自身のマージン目当てで強引に導入した「Shopify」のせいで、仕様確認は難航。元請けであるうちの会社にはShopifyのノウハウがなく、フォローすらできません。 1ヶ月で終わるはずの開発は、1年近くが経過しても完成のメドが立たない泥沼状態に陥っていました。
悪魔の囁き:「今月ヤバいから、完了金を前払いして」
リリースが一向に見えないまま、ずるずると時間が過ぎていたある日。
その外注担当者が、信じられない要求をしてきました。

ちょっと今月、資金繰りがヤバくてさ。完了金(残金)を先に払ってくれない?
本来であれば、絶対に飲んではいけない要求です。 「完了金」とは、システムがバグなく動き、クライアントが確認(検収)を終えて初めて支払われる性質のお金だからです。
しかし、彼は「社長の友達」という特権階級でした。 社内の力関係と情実が優先され、あろうことか、リリースもしていないのに彼へ完了金が前払いされてしまったのです。
これが、プロジェクトの息の根を止める致命傷となりました。
絶対に前払いしてはいけない業者の「殺し文句」
外注から以下の言葉が出たら、即座に警戒レベルをMAXにしてください。
- 「今月ちょっと資金繰りが厳しくて…」
- 「先に払ってくれたら、あとの修正は全部タダでやりますよ」
- 「外注スタッフへの支払いが先行してしまって…」
これらを言われた瞬間、相手の経営はすでに破綻しています。情けをかけてお金を払えば、あなたが泣き寝入りすることになります。
リリース目前の裏切りと「自爆事故」
完了金を手にした外注担当者ですが、当然モチベーションが上がるわけではありません。 彼にとってこのプロジェクトは、「もうお金にならない、面倒くさいだけのタスク(実質タダ働き)」に変わったからです。
そして、いざ何とかリリースに漕ぎ着けそうになった一番重要なタイミングで、事件が起きます。
彼はクライアントに対し「今日はどうしても外せない別件の仕事がありまして…」と嘘をつき、平日に遊びに出かけました。 そしてあろうことか、その遊び先で交通事故を起こし、そのまま入院してしまったのです。
当然、クライアントはブチギレました。 1年も待たされた挙句、リリース直前に嘘をついて遊びに行き、自爆事故で連絡が取れなくなる。発注者の怒りは頂点に達し、現場のフロントに立たされている私にすべてのクレームが降り注ぎました。
退院直後の「自己破産宣言」と、狂った社長の決断
しかし、本当の地獄は彼が退院した後に待っていました。
クライアントから大目玉を食らいながらも、なんとかプロジェクトを立て直そうと彼に連絡を取ったところ、返ってきたのはこの言葉でした。

あー、もう無理だわ。俺、破産することにしたから
そう言い残し、彼は完全に音信不通になりました。 急に消えたのです。前払いされた完了金を懐に入れたまま。
私は激怒し、すぐに社長に事の経緯と外注の逃亡を報告しました。 そして、「我々の責任です。クライアントから頂いた費用(150万円)は、一旦全額返金して謝罪すべきです」と要求しました。
しかし、私の会社の社長が放った言葉は、経営者として、いや、社会人として終わっていました。

えー、あいつ友達だから、俺はそんな厳しいことやりたくないなー。それに、あいつ自己破産してるからどうせ金は回収できないし(笑)
クライアントの損害よりも「友達」を優先し、のんきに笑う社長。
この瞬間、私はこの会社に見切りをつけました。
まとめ:完了金の前払いは「開発放棄のチケット」である
この凄惨な体験から、発注者やディレクターが絶対に肝に銘じるべき教訓は1つだけです。
「いかなる理由があろうと、完了金の前払いをしてはいけない」
ビジネスにおける「未払いのお金」は、制作会社や外注を動かすための**唯一にして最強のレバレッジ(交渉力)**です。 「資金繰りが厳しい」「今月だけ助けてほしい」という相手の泣き言に応じた瞬間、あなたはそのレバレッジを失います。
次回、最終回。 逃げた外注、狂った社長、怒り狂うクライアント。完全に孤立無援となったディレクター(私)は、放置された「得体の知れないShopifyサイト」を前に、どうやってクライアントの信頼を回復したのか?
「無償での1からの再構築」という泥臭い贖罪についてお話しします。


コメント