この記事のまとめ(3つの教訓)
- 身内びいきの罠: 経営者が「友達」という理由で外注を現場に入れると、指揮系統とコンプライアンスが完全に崩壊する。
- スパイ行為の危険性: 「自社の社員」と偽らせて外注を潜入させると、裏で別の商材を売られる(ブランドの毀損)リスクがある。
- 技術選定の私物化: 外注の「マージン目当て」で自社にノウハウのないツール(SaaS)を導入されると、システムがブラックボックス化する。
Webディレクターとして働いていると、理不尽なトラブルは日常茶飯事です。しかし、私がかつて経験した「ある炎上プロジェクト」は、クライアント起因のものではありませんでした。
すべての元凶は、「当時の社長」と「社長の友達(50歳の外注フリーランス)」でした。
この記事は、私が以前関わっていた制作会社(※のちに、別の補助金案件で黒字倒産します)で起きた地獄のエピソードです。 ディレクターがどれだけ汗水流して受注した案件でも、「経営者の身内びいき」と「無責任な外注への丸投げ」が絡むと、プロジェクトは音を立てて崩壊します。同業者や発注者の方々は、どうか「反面教師」として読んでください。
ちなみにその倒産したエピソードは以下の記事をご覧ください。

悲劇の幕開け:社長の「鶴の一声」で奪われた案件
当時、私はWeb制作会社の営業兼ディレクターとして働いていました。 ある日、クライアントから「ECサイトをリニューアルしたい」という相談を受け、綿密な打ち合わせを行いました。
クライアントの要望は明確で、カスタマイズ性の高い「EC-CUBE」を使った構築でした。幸いにも、私の所属していた会社はプログラム開発を主軸としており、EC-CUBEの構築・運用ノウハウも十分にありました。
意気揚々と要件を持ち帰り、社内でキックオフしようとした矢先、当時の社長の口から信じられない言葉が出たのです。

知り合いが独立して仕事がないらしいから、そいつにこの仕事を振ってやってくれ
私が苦労して取ってきた案件を、顔も知らない「社長の友達(当時50歳くらい)」に丸投げしろと言うのです。結果として私はメイン担当から強引に剥がされ、「その外注のアシスタント」という屈辱的な立ち位置に降格させられました。
社長の歪んだ指示:「うちの社員として現場に入れろ」
プロジェクトの入り口から、社長の指示は異常でした。

あいつは業務委託パートナーってことで、うちの会社の人間としてクライアントに紹介してくれ
クライアントからすれば、「発注した制作会社のベテラン社員が担当してくれる」と信じ込んでいます。現場がややこしくなるのを避けるため、私はその外注に「建前上、絶対に自分の会社名(屋号)をクライアントに出さないでください」と強く釘を刺しました。
発覚したスパイ行為(裏営業)
しかし、このルールは最悪の形で破られます。 しばらくして、クライアントから私にこんな相談が来ました。
「彼(外注)から提案されて導入した『媒体広告』なんだけど、全然結果が出なくて…」
……媒体広告? うちの会社ではそんなサービスは一切提供していません。 問い詰めた結果、なんと彼は「私が同席していないミーティングの場で勝手に身分を明かし、自身の広告サービスを営業して受注していた」のです。
自社の看板を使ってクライアントの懐に入り込み、裏で自分の商材を売る。完全にアウトな裏切り行為です。すぐさま社長に報告しましたが、返ってきた言葉はこれでした。

あー、まあ注意はしとくわ。でもあいつ友達だからさ〜(笑)
完全に終わっています。会社としてのガバナンスが存在しないことが確定しました。
技術選定の罠:「1ヶ月で終わる」という嘘とShopifyの強要
クライアントとの打ち合わせにおいて、彼は突如として仕様をひっくり返します。

EC-CUBE? 今どき古いですよ! これからはShopify(ショッピファイ)です。これなら1ヶ月で出来るし、安くしますよ!
この技術選定には致命的な問題が2つありました。
- 元請け(うちの会社)には、Shopifyの構築・運用ノウハウが一切なかったこと。
- 彼が強引にShopifyを推した理由は、単に自分が「Shopifyパートナー」であり、自分の実績とマージンが目当てだったこと。
制作会社がシステムを選定する際、「自社で保守・運用できるか」は絶対条件です。(※Shopifyが悪いわけではありません。自社で扱えないものを導入したことが問題なのです)。 しかし彼は、己の都合だけで自社が扱えないツールを強引にねじ込みました。
以下の特徴を持つ外注や担当者には要注意です。
- コンプライアンスの欠如: 元請けの社員を偽り、裏で自社の別商材を営業する。
- 技術の私物化: クライアントの要件や元請けの技術スタックを無視し、己のマージンのためだけに特定のツールを強要する。
- 根拠のない短納期: 「1ヶ月で終わる」と安請け合いし、詳細なWBS(作業分解構成図)を出さない。
無駄になった半年分のコストと「マスター権限」の罠
案の定、プロジェクトは破綻しました。 Shopifyの仕様確認の甘さと圧倒的なディレクション不足で、1ヶ月で終わるはずが半年経過しても完成のメドすら立たない泥沼状態に陥りました。
これによる実害は甚大です。 クライアントが新しく取得したドメイン代と、全く使われていないShopifyの月額利用料が、半年分も無駄に垂れ流されることになりました。
さらに恐ろしい「仕様の壁」が後から判明します。 当時契約していたShopifyのプランは、「マスター権限(オーナー)1名+スタッフアカウント1名」しか入れない仕様でした。 そして当然のごとく、マスター権限は「外注(友達)」が握っていたのです。
「1ヶ月でできると言ったのに、どうなっているんだ?」 不信感を募らせるクライアントの矢面に立たされるのは、裏でスパイ行為を働く外注でも、それを笑って済ませる社長でもなく、フロントに立っている私でした。
まとめ:身内びいきの外注が引き起こす崩壊
外注個人の「やりやすいツール」を許容すると、自社にノウハウが残らないばかりか、マスター権限ごと握られた「ブラックボックス」が残されます。
しかし、これはまだ地獄の入り口に過ぎませんでした。
半年以上遅延しているこのプロジェクトは、ついに「お金」のトラブルへと発展します。 「今月ヤバいから、完了金を先に払ってくれない?」 そう言い放った外注が引き起こした「自爆事故」と「自己破産による150万円持ち逃げ」の全貌は、次回の記事でお伝えします。


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